大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸家庭裁判所 昭和39年(少)3793号 決定

少年 S・Y(昭二〇・一・一〇生)

主文

少年を神戸保護観察所の保護観察に付する。

但しその期間は昭和四〇年一二月末日までとする。

理由

非行事実

少年は昭和三五年九月二一日恐喝、強盗傷人により当裁判所で保護観察の決定を受けたが、その後も依然その素行修らず、同年一一月七日、窃盗等、昭和三六年三月二〇日窃盗で、いづれも、当裁判所で不処分の決定を受けている。その間家出、転職を続け、昭和三九年三月以降は無為徒食の生活を送り、同年六月には母の集金、給料計一一万円を持ち出して家出、時々家人の留守中帰宅して兄の衣類を持ち出す等怠隋な生活を送つているもので、保護者の正当な監督に服さない性癖があり、その性格、環境に照し、将来、罪を犯す虞があるものである。

適条

少年法三条一項三号

処遇意見

家庭には母Y・T子(五〇歳、保険外交)、兄S・M(二五歳、工員)、妹K子(一四歳、中学生)があり、弟N(一七歳)は神戸市内で住込店員をしており、姉N子(二二歳)は結婚別居している。父S・Kは大酒家で、家庭を顧みない行動があつたが、昭和三九年九月三〇日結核で死亡している。母は勝気で、殆んど独力で子供を育てて来たが、最近では父の死亡、姉の結婚、少年の非行等問題の続出で、ややノイローゼ気味である。

少年は知能普通域(IQ一〇九、新制田中B1式)、内向、意志薄弱型で、一見従順であるが、真面目に暮している兄や姉にひがみと劣等感を持ち、退嬰的で、生活に計画性なく、自分だけのことを考えて家族の迷惑を考えない。酒好きで、かつとすると乱暴な行動をする。

昭和三五年三月○○○中学を卒業、いらい、転職、家出、不良交友を繰り返し、その非行状況は非行事実欄に記載の通りであり、その事実に基き、昭和三九年八月一九日神戸保護観察所長から当裁判所に対し犯罪者予防更生法四二条一項による通告があつた。

少年は現在梅毒にかかつているので、当然、医療少年院送致が相当と考えられたが、保護者は保護の意欲を失わず、保護者からの依頼により、今後は○○運輸株式会社(神戸市葺合区○○通○丁目○○)△△支店長○中○において、少年を同社で働かせ、監督したいと希望し、保護司も希望をすてていない。少年は満齢に近く、反省の態度を示しているところから、担当観察官も従前の態度を改め、観察を継続したい意向のもようである。梅毒の治療を怠らないことを条件として主文の通り決定する。

よつて犯罪者予防更生法四二条三項、少年法二四条一項一号により主文の通り決定する。

(裁判官 三輪勝郎)

遵守事項

一、○○運輸へ行つて真面目に働くこと。

二、梅毒の治療をすること。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例